武蔵野コンフィデンシャル

物書き岩戸の日常と身の回りを綴ります。

Wednesday, March 15, 2006

石の花



その石のことを初めて知ったのは、24~25年前のことだった。
今でも西新宿にある『ローズ・ド・サハラ』というアフリカン・レストランでのことである。
店のロビーに不思議なかたちをした石が置かれていた。
沢山の小さな石板は花弁のようで、それが互いに支え合うように集まり、
確かに薔薇の花のようにも見える不思議な石だった。
店名として採られた『ローズ・ド・サハラ』=サハラの薔薇石だったのである。
別名が『デザート・ローズ(荒れ野の薔薇)』ということもその時知ったように思う。
僕が薔薇石に魅かれたのは子供の頃に読んだ
ロシア民話の『石の花』という言葉が心の奥に残っていたからかもしれない。
確かロシアの『石の花』はウラル地方の民話で、王から石の花を彫れと命じられた彫刻家が
山中に咲くという本当の石の花を探しに行くというものだったと記憶している。
なんとロマンチックな話だろうと当時の僕は思ったはずだった。
えらく感じやすい子供だったのだ。

その石の花が咲くところがあった……。
ウラルではない世界のどこか……、そう石の花はサハラ砂漠に咲いていたのだ。
僕の心はときめいた。

2000年、パリ・ダカールラリーの取材でサハラを訪れた時、
砂漠や砂の街をはいずり回りながら、薔薇石を探したがついに見つけることはできなかった。
本当にサハラにその石はあるのか? と疑ったほどだった。
だってサハラのど真ん中や一番奥で必死に探したんだぜ!!

それから10数年後。チュニジアを訪れた時のことである。
チュニスのメディナの中をうろついていた僕は、ついにそこで薔薇石を発見した。
土産物屋の店頭に山のように積まれていたのである。
しかもほとんど捨て値同然だ。
あるところにはあるのだな……、と唖然とした。
現地の人に聞いた所によると、干上がったオアシスにできる結晶石であるという。
おそらくはオアシスの水に含まれるカルシウムなどが、干上がる時に結晶した物なのだろう。

捨て値同然と書いたが、実のところ捨て値と感じたのは僕たちの貨幣価値であって、
薔薇石は現地でとても大事にされているものなのである。
ただ大きく形の良い物は少なく、それ以外のものは高値が付かないのだ。

僕の部屋には今でも小さな石の花が置かれている。
砂漠の薔薇石はやはり神秘的だ。

1 Comments:

At 3:29 AM, Blogger いわと said...

綺麗かどうかわかりませんが、
なんだか不思議な石です。
石のような石でないような……。

おお、ナイト・イン・チュニジア。
かかってましたかぁ。

 

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